うるおい式基本の淹れ方(2)

計量と補助のため試飲カップを1つ使います。
1mlは1gであることを利用して湯量は試飲カップに入れてキッチンスケールで重さとして測ります。湯温は湯沸かしから試飲カップにうつしたあとの湯温です。

基本手順
1.少量の湯を注ぐ
  粉全体が濡れるか、せいぜいひたひた状態になる程度の湯を注ぐ
  粉をかきまぜないでまんべんなく注ぐ
2.そのまましばらく置く
3.人数前の半分弱の湯を注ぎ、すぐに内カップを持ち上げる

やや濃いめのコーヒーができますので、好みで薄めて飲みます。
ドリップ式で、コーヒー粉10gで1人前のコーヒー液を130mlを基準にする場合は、うるおい式基本の淹れ方でできたコーヒー液をうすめて100mlくらいを目安にするとよいでしょう。出来上がりのコーヒー液がやや少なめになるのはうるおい式が一部の成分をカットするためとお考え下さい。

以上が、うるおい式の基本的な淹れ方ですが、この方法だけですとあまりに低品質なコーヒー粉の場合渋み成分が取り切れない場合があります。逆に高品質でよい成分をたくさん持っているようなコーヒー粉の場合よい成分を出し切れない場合があります。このような場合にも対処できるように工夫したのが以降に述べる方法です。

うるおい式基本の淹れ方(1)

 まろやか/渋み仮説1に基づいて濃い状態を保つことによって、コーヒー成分のうちまろやか成分だけを取り出そうとする手順です。

まろやか/渋み仮説1
まろやか成分:高い濃度の水溶液にもとける
   全体としてとけやすい
渋み成分  :低い濃度の水溶液にしかとけない
   全体としてとけにくい

まずコーヒー粉全体がひたひたになる程度の少量の湯をかけ(ひたし)しばらく放置します。手順の2番目で湯を注ぐときは、一気に注いですぐに内カップを持ち上げます。一定量の湯が注がれた瞬間に濃度がうすくなり、渋み成分が溶けだしやすい状態になりますので、湯量は少なめにかつ短時間で終わらせることが大切です。目安として量と時間に数字を入れていますがコーヒー粉により、あるいは好みにより量と時間は変えてください。

うるおいドリッパー(2)

抽出されたコーヒー液は、外カップに出来あがるのですが、途中で補助的に別の受け容器を使います。プラカップが中にすっぽり入り込まないようにプラカップより直径が小さめの例えばガラスコップなどを使います。コーヒー教室では試飲カップを使っています。以下の淹れかたは、特にことわりがない場合コーヒー粉は10g(一人前)です。
紙フィルターは内カップのなかで広げて底につくように入れればよいのですが、次のようにすればきちんと綺麗に入ります。台形紙フィルターの接着された側が左になるように置きます。次に、右下の隅を起点にして台形の右側の線が、左側の線と平行になるように折ります。これを内カップの中で広げてカップの底にしっかりつくように、かつ、フィルターの上辺が水平くになるように広げればきれいにセットできます。

うるおいドリッパー(1)

市販のプラカップの底に穴をあけたもの1個と、穴をあけないそのままのもの1個、それとカップホルダーを組み合わせたものです。穴の形は○である必要はなく、カッターで△の穴を空けてもかまいません。
2個のプラカップのうち、穴を空けた方を内側にして重ねて使います。穴の空いた方を「内カップ」もう一方を「外カップ」と呼びます。紙フィルターは、台形の紙フィルターを内カップの中に広げて底まで押し付け、その中にコーヒー粉を入れます。

うるおい式淹れ方(3)

自分好みの抽出条件を探すには、抽出に再現性があることが大切です。粒度、湯の量、温度、ひたす時間を同じにすれば同じ味になります。なぜなら、抽出の大部分はひたし時間内に終わり、つづく注湯は少量の湯を一気にかけるだけなので毎回同じやり方が可能だからです。うるおい式の長所がこの再現性のよさです。
それに対しドリップ式は、たとえ粒度、湯の量、温度、蒸らし時間を同じにしてもそのあと2〜3分もの間細くあるいは太く湯を同じパターンで注ぎ続けることが難しく、結果として溶け出す成分がブレやすいのです。同じ条件で淹れても毎回味が違うようでは好みの条件を探すのが難しいのは当然でしょう

うるおい式淹れ方(2)

ひたひた状態で抽出されたコーヒー液は濃度が高いとはいえ少量しかありません。これに湯をかけて洗い出すのですが、このとき時間をかけないのがうるおい式の肝要なところで、うるおい式の再現性のよさの理由でもあります。ドリップ式は湯を注いでいるとき同時に抽出液が抜けていく方法です。従って、濃度が薄い状態が続くため渋み成分も出やすくなります(注)。別の言い方をすれば、うるおい式抽出はドリップ式なら抽出される成分の一部をカットしています。このカットされる成分に渋みが多いコーヒー粉ならうるおい式が向いており、カットされる成分に渋み成分がないならドリップ式が向いているといえます。

注:松屋式ドリップでは濃度が薄くならないような細い湯を時間をかけて人数前の半分だけ注湯します。

うるおい式淹れ方(1)

粉全体がやっとひたる程度のひたひた状態(ひたし)を一定時間保ちます。そして高い濃度の状態で抽出されたコーヒー液に少量の湯(水)を一気にかけて短時間で取り出します。うるおい式での「ひたし」はドリップ式の「蒸らし」とは異なります。ドリップ式の蒸らしがそれに続く抽出がうまくいくための準備であるのに対し、うるおい式でのひたしは抽出の主体です。ひたしの間に溶け出す成分こそが抽出したい主な成分になります。普通ひたしには1〜2分かけます。つづく注湯はひたしで溶け出した成分をいわば洗い出すための湯ですから量はせいぜい人数前の湯量の半分程度、あるいはそれより少なくてもかまいません。それを一気に注ぎあとは自然に落ちるのを待ちます。一気に注ぐのには、理由があります。この湯がかかった瞬間に粉のまわりの液体は薄くなり、渋み成分も溶け出しやすい状態になりますのでできるだけ短時間に終わらせる必要があるからです。また、湯を一気に注ぐ操作であれば、毎回同じようにできるので再現性もよくなります。注湯量を多くするとうまくいきません。湯が多いほど粉の周辺の液体は薄い状態になり、その湯が下りるまでにより時間がかかるため、それだけ渋み成分が溶け出しやすくなるからです。上に述べた抽出ができるように考案したのが「うるおいドリップ」です。