うるおい式淹れ方(1)

粉全体がやっとひたる程度のひたひた状態(ひたし)を一定時間保ちます。そして高い濃度の状態で抽出されたコーヒー液に少量の湯(水)を一気にかけて短時間で取り出します。うるおい式での「ひたし」はドリップ式の「蒸らし」とは異なります。ドリップ式の蒸らしがそれに続く抽出がうまくいくための準備であるのに対し、うるおい式でのひたしは抽出の主体です。ひたしの間に溶け出す成分こそが抽出したい主な成分になります。普通ひたしには1〜2分かけます。つづく注湯はひたしで溶け出した成分をいわば洗い出すための湯ですから量はせいぜい人数前の湯量の半分程度、あるいはそれより少なくてもかまいません。それを一気に注ぎあとは自然に落ちるのを待ちます。一気に注ぐのには、理由があります。この湯がかかった瞬間に粉のまわりの液体は薄くなり、渋み成分も溶け出しやすい状態になりますのでできるだけ短時間に終わらせる必要があるからです。また、湯を一気に注ぐ操作であれば、毎回同じようにできるので再現性もよくなります。注湯量を多くするとうまくいきません。湯が多いほど粉の周辺の液体は薄い状態になり、その湯が下りるまでにより時間がかかるため、それだけ渋み成分が溶け出しやすくなるからです。上に述べた抽出ができるように考案したのが「うるおいドリップ」です。